【注意喚起】委託元が委託先のスタッフに直接指示していませんか?

~偽装請負と指揮命令の基本~

こんにちは、医療・介護業界に強い「おくすり社労士」こと石田です。

最近ご相談が増えているのが、「業務委託契約を結んでいるのに、委託元が直接指示を出している」というケース。

これ、実は「偽装請負」に該当し、厚生労働省からの行政指導や法的リスクを招く恐れがあります。

今回は、厚労省のリーフレットや公式通達をもとに、「指揮命令権」と「契約形態の違い」について分かりやすく解説します。

■ 指揮命令権は委託先にしかない

業務委託契約(請負・準委任)においては、委託元(発注者)が委託先の労働者に直接業務指示を出すことはNGです。

業務の進め方や働き方についての「指揮命令権」は、あくまで委託先の会社に属します。

■ 偽装請負になるとどうなる?

厚生労働省は、「労働者派遣と請負の区分に関する基準」(いわゆる37号告示)や、都道府県労働局が配布するリーフレットで、以下のように明確に示しています:

「請負契約においては、請負事業主が自己の雇用する労働者に対して指揮命令を行うものであり、注文者(委託元)は直接指揮命令してはならない」

それにもかかわらず、以下のような状況があると「偽装請負」と判断される可能性があります:

・委託元の社員が「この作業やって」と直接指示

・勤務時間・休憩時間・シフトを委託元が決めている

■ 厚労省のリーフレットでも注意喚起

実際に、厚生労働省や都道府県労働局では以下のようなリーフレットが公開されています:

・「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」(厚生労働省)

・「偽装請負になっていませんか?」(福島労働局)

・「請負と派遣の違いについて」(東京都労働局)

いずれも、「契約の形式」ではなく「実態」で判断されると明記されています。

つまり、書面が請負契約であっても、現場で発注者が指示していればアウトということです。

■ じゃあ、指示したいときはどうすれば?

結論から言うと、指揮命令を行いたいのであれば「派遣契約」に切り替えるべきです。

派遣契約であれば、法律上、派遣先(委託元)が派遣労働者に業務指示を出すことが認められています。

ただし、派遣契約には「派遣法上の制限」や「期間のルール」「派遣元の許可要件」などがありますので、事前の準備が欠かせません。

■ チェックポイント:うちは大丈夫?

以下のような点を確認してみてください:

□ 委託先の従業員に直接「今日これやって」と指示している

□ 委託先のスタッフのシフトや休憩時間を委託元が決めている

1つでも該当すれば、偽装請負の疑いがあるかもしれません。

■ 最後に:知らなかったでは済まされません

医療・介護の現場では、「ちょっとお願い」と現場判断で業務を依頼してしまうことも多いですが、それが後に大きなリスクや指導の対象になることがあります。

「請負契約」「派遣契約」それぞれのルールを守り、現場でもしっかりと運用できる体制を整えておくことが重要です。

ご心配な点があれば、いつでもご相談ください。

現場の実態を踏まえた契約チェックや、是正アドバイス、指導対応にも対応しています。

【関連リンク】

厚生労働省|労働者派遣・請負ガイド(PDF)

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HOLOS社労士&行政書士Labo
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