【薬機法改正】「エビデンスなしでも承認可能?」医薬品承認制度の見直しに薬剤師・社労士が感じた懸念
2024年5月、日本の医薬品承認制度が大きな節目を迎えました。改定薬機法(医薬品医療機器等法)が国会で可決・成立し、医薬品の承認プロセスや販売ルールに重要な変更が加えられました。
この改正法案に対しては、患者の安全性に関わる「制度の後退」として、現場や専門家からの懸念も多く聞かれます。今回は、薬剤師・社労士の立場から、医療・薬局・介護現場への影響を考察してみます。
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik25/2025-05-20/2025052002_06_0.html
■ なぜ「臨床試験の削除」が問題なのか?
改正薬機法では、これまで新薬の承認に必要とされてきた「検証的臨床試験の成績」を、法律上の必須要件から削除しました。
たしかに、希少疾患の治療薬などは従来の承認制度では時間がかかりすぎるケースもあり、柔軟性を高める必要性は理解できます。しかし、厳密なエビデンス(科学的根拠)なしに新薬が承認・流通するとなれば、服薬リスクの見極めや副作用対応を現場の薬剤師がより慎重に担う必要が出てきます。
患者さんの信頼に応えるには、制度が緩やかになる分だけ、現場での安全管理やフォローアップ体制の強化が求められるでしょう。
■ 規制緩和が「身近な薬の販売」にも影響
今回の改正では、薬の販売形態にも大きな変化があります。
- 要指導医薬品(医療用から市販へ転用されたばかりの薬)が、オンライン服薬指導を経ればネット購入可能に
- 市販薬の一部を、条件付きで薬剤師不在のコンビニでも販売可能に
これらの動きは利便性向上の一方で、過量服薬(オーバードーズ)や乱用リスクへの懸念も無視できません。特に若年層で問題化しているオーバードーズに対しては、対面での声かけや服薬状況の確認が重要な予防策となるため、薬剤師としては「人を介した安全網」が削られることに不安を感じます。
■ 「制度改正」が医療・薬局現場の業務に与える影響
社労士の立場から見ると、このような制度改正により、薬局やドラッグストアの業務体制・人員配置・安全管理体制にも見直しが迫られる可能性があります。
たとえば、
- オンライン服薬指導に対応するIT環境や人材の整備
- 深夜帯など薬剤師不在時間の販売管理体制の明確化
- 教育・研修強化による安全性確保とトラブル防止
これらは、現場の負担増やリスク管理の難度向上にもつながるため、今後の労務設計や職場環境改善がカギになります。
■ 今回の改正と「処遇改善加算・ベースアップ評価料」の関係は?
今回の薬機法改正は、薬局やドラッグストアの運営形態や安全管理体制に間接的な影響を与える可能性はありますが、現時点で「処遇改善加算」や「ベースアップ評価料」と直接の関連は見られません。
これらの加算制度は主に医療機関や介護施設を対象としており、調剤薬局は基本的に対象外です。しかしながら、職場の業務量が増えたり、業務内容が高度化したりする中で、「待遇改善」や「人材確保」の視点から、薬局やドラッグストアでも独自の処遇改善を進めていく必要性は高まっていると感じています。
■ HOLOSとしての視点
制度改正の波は、直接的な対象でなくても、じわじわと現場に変化をもたらします。宮城県・仙台市を拠点とするHOLOS(ホロス)社労士&行政書士Laboでは、医療・薬局・介護に特化した労務設計や制度対応のサポートを行っております。
医療機関・薬局・ドラッグストアなど、制度の過渡期にある事業者の皆さまにとって、「何を備えるべきか」を一緒に考えるパートナーとしてお力になれたら幸いです。
柔軟な制度は時に革新を生み出しますが、安全性と信頼を犠牲にしてはいけません。
制度の先を読む視点と、現場で守るべきもののバランスが、これからの薬局・医療の未来を左右すると感じます。
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