エトミデート含有の危険ドラッグが沖縄で確認──薬剤師・社労士の視点で見る“隠れたリスク”

沖縄県内で、「エトミデート」という国内未承認の医薬品成分を含む危険ドラッグが確認され、若年層を中心に健康被害が広がっています。
このようなニュースを見ると、つい「自分には関係ない」と感じるかもしれませんが、薬剤師としての視点、そして社労士としての立場から見ると、決して他人事では済まされない深刻な問題が見えてきます。

https://news.yahoo.co.jp/articles/7974f7d351bd535ed997875c2504a64a527d39b5


■ 「エトミデート」とは? ── 医療現場では厳重管理される麻酔薬

エトミデートは本来、手術時などに使われる強力な静脈麻酔薬であり、国内では未承認。使用にあたっては、医療従事者の厳密な管理のもと、心電図モニターや人工呼吸器を準備した状態で投与される薬です。

このような薬剤を、一般の方が何の管理もないまま吸入するのは、極めて危険です。
・呼吸抑制
・意識消失
・心拍異常
など、命に関わる副作用もあり、たとえ少量でも健康被害が起こる可能性があります。


■ “電子たばこ感覚”での使用が急増中──若年層への広がりが深刻

問題となっているのは、液体リキッドとして電子たばこ型に加工された製品。見た目には無害に見えることから、SNSなどを通じて「ちょっとした気分転換」や「笑気ガスの代替品」として、10代・20代の若者に広がっているとみられます。

薬剤師として言えるのは、「リキッド=安全」では決してありません。
中身が何か分からず、成分表示もないまま吸引することは、まるでロシアンルーレットのような行為です。


■ 健康被害だけでなく、労働問題・社会的責任にも波及

ここからは社労士としての視点になりますが、こうした薬物の使用は、個人の健康リスクにとどまりません。

例えば、

  • 使用後の意識混濁状態で交通事故を起こす
  • 職場でのトラブルや労災を引き起こす
  • 薬物検査陽性による懲戒処分や解雇

といった、労働契約や就業規則に関連したトラブルへと発展するケースもあります。

企業側も、従業員の安全配慮義務や職場環境の整備といった面で、予防的な対応が求められる時代です。とくに若年層のアルバイトや新入社員が影響を受けていた場合、企業の信用問題にもつながりかねません。


■ 周囲の気づきが、命を守る行動につながる

「まさか、うちの子が」「職場にそんな人はいないだろう」
そう思っていても、危険ドラッグは見た目だけでは判断ができません。

薬剤師として、社労士として、声を大にして伝えたいのは、「使わないことはもちろん、周囲が気づいて声をかけることも重要」ということです。

家族、同僚、学校の友人──身近な誰かが異変を感じたときは、ひとりで抱え込まず、医療機関や相談窓口に繋ぐ勇気が必要です。


■ 企業や学校でも“薬物対策”の体制づくりを

企業では就業規則や衛生委員会、学校では生徒指導の一環として、こうした薬物に関する教育や対策の見直しを進める必要があります。
厚生労働省も「健康被害の恐れがある」として注意喚起を行っており、今後、法的な規制や制度の整備も進む可能性があります。


薬のプロとして、働く人を支える立場として、これからも正しい知識をわかりやすく伝えていくことが使命だと感じています。

「知らなかった」では済まされないリスクが、静かに広がっている今、まずは身近なところから見直していきましょう。

HOLOS社労士&行政書士Labo
薬剤師・社会保険労務士・行政書士
石田 宗貴

投稿者プロフィール

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