ネコからヒトへの感染で獣医師が死亡──SFTSのリスクと医療現場が考えるべきこと
こんにちは。
仙台で薬剤師・社労士として医療・介護事業者のサポートをしている HOLOS(ホロス)社労士&行政書士Labo です。
2025年6月、三重県内で動物病院を開業していた高齢の獣医師が、**SFTS(重症熱性血小板減少症候群)**に感染し、治療のかいなく亡くなるという非常に痛ましい事例が報じられました。
この感染は、SFTSに感染していたネコの治療にあたった際にヒトへ感染した可能性があるとされています。ネコにかまれた、あるいは傷口に唾液や体液が触れた可能性があるとも考えられています。
今回はこのニュースをきっかけに、医療や介護現場、そして動物医療も含めた広い意味での「感染対策」や「労務管理」について考えてみたいと思います。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250613/k10014834291000.html
■ SFTSとは?ヒトにも致死的な感染症
**SFTS(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)**は、ウイルスを保有するマダニに刺されることで感染する感染症です。
- 潜伏期間は6日〜2週間
- 発熱、下痢、嘔吐、血小板減少による出血傾向などの症状
- 重症化しやすく、致死率は約27%(2024年時点、国立健康危機管理研究機構より)
- 感染ペット(ネコ・イヌ)からヒトへの感染例も複数報告あり
- 2024年には抗ウイルス薬ファビピラビルが治療薬として承認
農作業やアウトドア活動でマダニに刺されるだけでなく、SFTSに感染したネコやイヌから唾液や血液などを介して感染するリスクがあることが、今回のケースでより強く認識されました。
■ 獣医療だけの問題じゃない。医療・介護現場にも共通する「感染リスク」
今回の報道は動物医療の現場での出来事でしたが、内容は決して無関係ではありません。
病院・クリニック・薬局・介護施設などでも、日常的に感染症と隣り合わせの業務が行われています。
新型コロナの「5類」移行後は、国の補助金が終了し、感染対策費は診療報酬や加算によって吸収せざるを得ない状況が続いています。
ですが現場からは「診療報酬の加算では到底まかないきれない」「防護服や空気清浄機のコストが重い」といった声も多数上がっています(全国保険医団体連合会による調査では約77%が「不十分」と回答)。
■ 感染対策と労務管理は切り離せない
このような状況は、労務管理の視点からも重大な課題です。
たとえば医療機関では、感染症患者と日常的に接する職員の安全確保が求められます。
これは労働安全衛生法上の「安全配慮義務」にも通じ、対策が不十分な場合、労災や訴訟リスクにつながるおそれもあります。
また、介護事業所では「処遇改善加算」において、**「職場環境等要件」**という項目があり、
- 働きやすさの改善
- 健康確保
- 教育機会の提供
などが加算の根拠になります。
一方、医療機関の「ベースアップ評価料」では、給与の引き上げ実績が要件となるため、感染対策の内容そのものは直接の加算条件にはなりません。
とはいえ、どちらの制度でも、現場職員の安心・安全が確保されていなければ定着率は上がらず、加算を維持する体制自体が揺らぐことになります。
■ 薬剤師・社労士としての現場実感
私はこれまで、薬剤師として感染対策の最前線に立ち、また社労士として医療法人や薬局の労務整備にも関わってきました。
その中で強く感じるのは、「制度上の評価」と「現場で求められる安全対策」のギャップです。
- 「制度には書いてないけど、これをやらなきゃ現場は回らない」
- 「加算をとれても、人が辞めたら意味がない」
こうした現実が、至る所で起きています。
だからこそ、制度の枠組みだけでなく、現場の空気を感じた“総合的な支援”が必要だと感じています。
■ 最後に──感染対策は「全ての現場の責任」
医療・介護・動物医療──対象は異なっても、感染症のリスクからスタッフを守るという点では根本は同じです。
「ネコを助けようとした獣医師が命を落とした」
これは他人事ではありません。
- 現場の安全対策は十分か?
- マニュアルだけでなく、日々の運用はどうか?
- 職員に正しい知識と装備があるか?
今一度、自院・自施設の体制を見直す機会にしていただければと思います。
HOLOS(ホロス)社労士&行政書士Laboでは、医療・薬局・介護業界に特化し、現場に即した労務管理・感染症対策・加算制度の導入支援を行っています。
仙台・宮城県を中心に、東北エリアの医療機関・クリニック・薬局の皆さま、ぜひお気軽にご相談ください。
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