中高年のうつ病に認知症物質が関与か―気分障害と認知症の新たな関係性

2025年6月、量子科学技術研究開発機構(QST)と慶応義塾大学などの研究チームが、興味深い研究結果を発表しました。
それは「中高年で発症するうつ病などの気分障害に、認知症の原因物質が関与している可能性がある」というものです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/ab2c7ecf310c2ca654634b14a55e03e5e8661c2e

■ 研究内容の要点

研究チームは、40歳以上でうつ病や双極性障害(躁うつ病)を発症した患者52人と、健常者47人を対象に、**陽電子放射断層撮影(PET)**を用いて脳内の「タウ」と「アミロイドベータ」というタンパク質の蓄積を調べました。これらはアルツハイマー病などの原因として知られています。

  • 健常者ではタウの蓄積が見られたのは約15%。
  • 一方、気分障害を持つ患者ではその割合が**50%**に上昇。
  • 特に幻覚や妄想を伴う重症患者では、タウの蓄積が多い傾向がみられました。
  • アミロイドベータの蓄積についても、患者群でより高い割合が確認されました。

この結果は、中高年以降の気分障害の一部が、将来的な認知症の初期兆候である可能性を示唆するものであり、認知症の早期診断や介入の可能性を広げる新たな一歩として注目されています。


■ 薬剤師・社労士としての視点から:医療機関・職場環境の意識変革を

この研究結果は、医療の現場だけでなく、労務管理や職場環境の整備にも影響を及ぼす可能性があると感じています。

中高年期に差し掛かる医療・介護・薬局などの現場職員にとって、うつ病や不安障害、さらには認知症への懸念は、決して他人事ではありません。特に女性の場合、更年期と精神症状が重なるケースも多く、見逃されがちです。

■ 職場で求められる「気づき」と「対話」

現場でのメンタルヘルス対策は、もはやオプションではなくマネジメントの基本的責任の一部といっても過言ではありません。

実際、介護分野では処遇改善加算の「職場環境等要件」において、「健康診断の実施」や「職員の健康づくりの推進」が明文化されており、これらに取り組むことが算定の前提となっています。

一方、医療機関における「ベースアップ評価料(2024年度診療報酬改定で新設)」においては、評価要素という形で職場環境や健康対策が明記されているわけではありません
ただし、届出要件として、職員の処遇改善計画の策定や継続的な賃上げへの取り組みを医療機関として宣言・実行することが求められており、「働きやすい職場づくり」を推進する方向性は、制度全体から明らかです。


■ HOLOS社労士&行政書士Laboでは…

私たちHOLOS(ホロス)社労士&行政書士Laboでは、薬剤師・社労士の専門性を活かし、仙台・宮城県内を中心に医療・介護・薬局業界の職場環境整備や労務管理のサポートを行っています。

  • メンタルヘルス対策の導入支援
  • 健康診断の実施体制の整備
  • 処遇改善加算や診療報酬改定に対応した運用体制の構築

これらを一貫して支援し、制度の要件にきちんと対応しながら、働く人の心身の健康を守る取り組みを応援しています。


■ おわりに

「うつ病」と「認知症」。これまで別の疾患として考えられてきた2つの病が、実は密接に関わっているかもしれないという今回の研究は、現場でも意識の転換を促す契機になるでしょう。

これからの医療・介護現場では、「病気になったら対応する」のではなく、「未然に気づき、対処する」体制づくりが求められます。
まずは、職場内での声かけ・気づき・相談しやすい環境づくりから始めてみませんか?

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