医師の偏在問題が深刻化:地方医療を支えるために必要な対策とは
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240925/k10014592031000.html
最近、厚生労働省が「医師の偏在」問題に対し、本格的な対策を議論するため、専門家を交えた検討会を開始することが報じられました。この問題は、地方や特定の診療科で医師が不足する一方、都市部には多くの医師が集中しているという構造的な課題です。地域医療を維持するため、医師不足をどう解消するかが緊急の課題となっています。
医師の偏在とは?
医師の偏在は大きく分けて「地域の偏在」と「診療科の偏在」の2つに分類されます。
- 地域の偏在:都市部(東京、大阪など)に医師が集中し、地方の医療機関では医師が不足している現象です。これには医師が専門的な技術を学びたいという理由や、家族の都合による都市部での生活を希望する要因が含まれます。
- 診療科の偏在:特に外科、産科、救急科など、24時間体制が求められる診療科で医師が不足しています。これらの診療科は、勤務時間が長くなりがちなこともあり、若い医師の志望者が少なくなっているのが実情です。
厚生労働省はこれらの偏在を数値化し、各都道府県の医師数を「医師偏在指標」という形で公表しています。このデータをもとに、医師が少ない「医師少数県」や、比較的多い「医師多数県」を分類し、偏在解消のための対策を進めています。
厳しい現状に直面する地方医療機関
地方の医療機関では、医師不足によって一部の診療科が閉鎖されたり、救急体制が縮小されたりするケースが増えています。例えば、新潟市の木戸病院では、医師数が5年間で53人から42人に減少し、産科の閉鎖を余儀なくされました。この病院では、地域医療を維持するために大学病院からの医師派遣や都市部からのアルバイト医師に頼っていますが、それでもギリギリの状態が続いています。
どのような対策が必要か?
厚生労働省は今後、次のような新たな対策を検討する予定です。
- 新規開業の抑制:開業医が多い地域での新規開業を抑制し、医師が不足している地域に医師を誘導する方針。
- 勤務要件の見直し:医師が少ない地域での勤務を、病院の管理者(院長など)になるための要件にするなど、地方での勤務を促進する仕組みを検討。
地方の病院では、医師確保のために給与の引き上げや家賃手当、住宅の提供など様々な努力がなされていますが、それでも医師の確保は容易ではありません。医師が都心部でのキャリアとワークライフバランスを優先し、地方を選ばない状況が続いているのが実情です。
薬剤師や社労士としての視点
地方の医療機関が直面する医師不足は、薬剤師や他の医療スタッフにも影響を与える可能性があります。医師がいなければ、病院やクリニックの運営は成り立たず、薬剤師や他の医療従事者が働く場も減少します。また、地方医療機関の存続は地域全体の医療提供体制に関わる問題であり、地域住民にとっての大きな課題です。
社労士としても、医療機関で働くスタッフの労働環境や働き方改革を通じて、医師不足に対する改善策をサポートできる領域は広がっています。医師だけでなく、すべての医療従事者が働きやすい環境を整備することが、結果として地域医療の質向上につながるでしょう。
今後、厚生労働省の対策がどのように進展するか、引き続き注目していきたいと思います。
薬剤師・社会保険労務士・行政書士
石田宗貴
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