医療スタッフ不足とAIの活用──変わりゆく現場に何が必要か
日々、医療や介護、薬局の現場で働く方々とお話ししていると、「人手が足りない」という言葉を耳にしない日はありません。高齢化が進む中で、医療機関の人材確保はますます難しくなっています。
そんななか、アメリカ発のAI技術が、日本の医療現場に新しい風を吹き込もうとしています。
受診予約や服薬管理、退院後のフォローなどを担うAIエージェントが、2025年中に日本で本格的に導入されるというニュースは、医療従事者にとっても見逃せない話題です。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250616/k10014836051000.html
AIエージェントとは?──人を支える技術として
このAIエージェントは、いわゆる「自律型」のAI。患者からの問いかけや状況に応じて、事前の細かい指示がなくても動けるのが特徴です。予約管理や問診、服薬サポート、さらには退院後の体調確認まで担い、世界で250万人の患者がすでに活用しているといいます。
CEOによれば、「高齢化による医療スタッフ不足は、もはやAIでなければ補えない」とのこと。日本でも年内にサービスを開始予定で、国内ベンチャー企業と提携し準備が進んでいるようです。
現場に浸透し始めたAI──すでに始まっている変化
日本国内でも、すでに一部の病院ではAI導入の動きが始まっています。たとえば埼玉県川口市の総合病院では、電子カルテと医療機器を連動させたデジタル化を進め、さらにAIが患者と会話しながら入院手続きを説明するなど、人手を補完する形での活用が進んでいます。
こうした事例は、仙台や宮城県の医療機関・クリニック・薬局など、今後の人材確保に課題を抱える地域にとっても、大きなヒントになるはずです。
技術導入と労務管理はセットで考える
AIを導入すれば、スタッフの負担軽減や業務効率化が期待されます。しかし一方で、それに伴う「働き方の変化」や「評価の見直し」も同時に考える必要があります。
たとえば、AI導入によって事務業務が減ったとしても、その分浮いた時間をどのように再配分するか。現場のスタッフの職務評価や処遇にどう反映するか。これらは、「ベースアップ評価料」や「処遇改善加算」といった制度と絡めながら、労務管理の視点から丁寧に設計していくべき点です。
HOLOSとしてできること
私たちHOLOS(ホロス)社労士&行政書士Laboでは、医療・介護・薬局の皆さまが抱える課題に、制度と現場のバランスをとる形で向き合ってきました。
AIという新しいツールが入ることで、業務は確かに効率化されますが、それに伴う「人の働き方の変化」こそ、見逃してはいけないポイントです。
どんなに優れた技術も、それを活かす制度やルールがなければ、定着しません。人材の確保・評価・処遇という観点からも、AI導入は「人を減らす」ではなく、「人を守る」取り組みであってほしいと感じます。
医療の現場がこれからどう変わっていくのか。
そして、そこに働く人たちの働き方はどうあるべきか。
制度と現場をつなぐ視点から、これからもお役に立てる情報を発信していきます。
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