就職氷河期世代の老後問題──年金満額でも貧困化するリスク
現在、40~50代の「就職氷河期世代」が老後に貧困化するリスクが高まっています。就職難や非正規雇用が多かった時期に働いていたこの世代は、年金受給額が低いことが老後の生活に大きな影響を与え、生活保護を受ける可能性が高くなっています。さらに、少子高齢化に伴う年金の減額調整も、この問題を一層深刻にしています。
今回は、就職氷河期世代の老後の問題と、その解決策として注目される年金制度の見直しや生活保護の仕組みについて解説し、私たちにとって重要なポイントを整理してみましょう。
https://medical.jiji.com/news/60186
■ 就職氷河期世代とは?──低賃金と非正規雇用の影響
「就職氷河期世代」とは、1993年から2004年頃に社会人になった世代を指し、約1700万人が該当します。この世代は、バブル崩壊後の不況の影響で就職難が続き、正社員として就職できなかったり、非正規雇用に甘んじたりした人が多くいます。これが、老後の年金受給額に大きな影響を及ぼすことになったのです。
特に、非正規雇用の増加や厚生年金の加入期間が短いことから、老後に基礎年金を頼りにする人が多いのが現実です。しかし、年金額が十分に支給されない場合が多く、生活に困窮するリスクが高まっています。
■ 基礎年金満額でも貧困リスク──その仕組みと影響
基礎年金は、国民年金保険料を40年間納めることで満額(月額6万9308円)を受け取ることができます。しかし、就職氷河期世代の多くは保険料の未納や免除期間があるため、その分年金額が減額されることになります。これにより、老後の生活が年金だけでは十分に支えきれない状況が生じているのです。
例えば、月額6万9308円の基礎年金だけでは、生活費や医療費、日常的な支出を賄うには不足することが多くなります。低年金で生活に困窮し、最終的に生活保護に頼らざるを得ない状況が続出する可能性があります。
■ 生活保護制度──老後のセーフティネット
生活保護は、資産や身寄りのない人を支援するために設けられた制度です。東京都の場合、65~74歳の生活保護費は、生活扶助と住宅扶助を合わせて月13万580円となります。これにより、日々の生活や家賃をカバーできるため、年金収入との併給が可能で、差額分が支給されることになります。
ただし、生活保護費は物価の上昇や消費支出の増加に応じて定期的に改定されますが、基礎年金の給付水準は物価上昇よりも低く抑えられているため、今後は生活保護との差がますます広がることが懸念されています。
■ 解決策として求められる支援──年金水準の引き上げと住居確保
有識者からは、年金水準の底上げや住居確保支援が求められています。特に、年金水準を引き上げることで、生活保護を必要とする人を減らすことができると期待されています。また、住居の確保についても、老後の生活に欠かせない要素として、十分な支援が必要です。
これらの支援策が進めば、就職氷河期世代が老後に直面する貧困リスクを軽減し、より安心して生活できる社会を築くことが可能になります。
■ 生活保護や年金制度を考える──私たちができること
私たちができることとして、自分自身の年金や老後の生活設計を早期に見直すことが重要です。特に、個人年金や自営業者のための積立など、国の年金だけでは補えない部分を自分で準備しておくことが有効です。
また、企業としても、従業員のライフプランや年金制度について適切にアドバイスできるようにすることが、社会的責任の一環として求められています。
■ まとめ──老後の生活を守るために
就職氷河期世代が抱える老後の貧困リスクは、低賃金や年金の減額調整によって、ますます現実味を帯びています。これに対して、年金水準の引き上げや生活保護の改善が求められます。
また、個人としても、自分の老後に備えるための準備を今からしっかりと行うことが大切です。生活保護を必要とする人が増えれば、社会全体の負担が大きくなります。そのため、私たち一人一人が自分の未来に向けて、できる限りの備えをしていくことが、より良い社会の実現につながるでしょう。
HOLOS社労士&行政書士Labo
薬剤師・社会保険労務士・行政書士
石田 宗貴
投稿者プロフィール

最新の投稿
医療ブログ2025年5月6日【医師の偏在対策は効果薄?】地方の医療体制維持に必要な本当の支援とは
医療ブログ2025年5月5日就職氷河期世代の老後問題──年金満額でも貧困化するリスク
医療ブログ2025年5月5日老化細胞の除去と若返りの可能性──企業の取り組みが進む中で
医療ブログ2025年5月5日広末涼子さんの「双極性感情障害」報道に寄せて──精神疾患と社会的責任をどう捉えるか