広末涼子さんの「双極性感情障害」報道に寄せて──精神疾患と社会的責任をどう捉えるか
俳優の広末涼子さんが、芸能活動の休止を発表されました。報道によると、精神疾患である「双極性感情障害(双極性障害)」と「甲状腺機能亢進症」が診断され、現在は入院・通院治療を受けながら自宅療養を続けているとのことです。
一連の報道には、交通事故や病院での暴行の疑いが含まれていることから、社会的にも大きな注目が集まっています。しかし、私はこのニュースを通じて、「病気と責任のあり方」「職業人としての支援の必要性」について、あらためて考えさせられました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250502/k10014795781000.html
■ 双極性感情障害とは──気分の波が極端に現れる疾患
薬剤師としてお伝えすると、「双極性感情障害」は、かつての「躁うつ病」に該当する疾患で、気分が高揚する“躁状態”と、深く落ち込む“うつ状態”を周期的に繰り返す病気です。
- 躁状態では、怒りっぽくなったり、判断力が鈍ったり、突発的な行動が目立つこともあります。
- うつ状態では、自己否定が強まり、生活機能が著しく低下します。
この病気は、外見や一時的な言動だけでは判断がつきにくく、周囲の理解と継続的な治療が必要とされるものです。
治療には気分安定薬や抗精神病薬などが用いられますが、服薬コントロールや医療支援の体制が不安定なときには、生活や社会的活動に影響を及ぼすことがあるため、家族や関係者の支えが極めて重要になります。
■ 社労士の視点で考える──精神疾患と「社会的責任」の線引きはどこに?
広末さんのケースに限らず、精神疾患のある人が加害行為やトラブルに関与した場合、「責任能力」と「治療状況」が問われることは、よくあります。
社労士として多くの労働者支援に関わる中で見えてくるのは、以下のような難しさです:
- 「精神疾患=免責」ではないが、病気が影響していたことも事実
- 職場では、問題行動と疾病との因果関係が不明確なまま、懲戒や解雇に進むケースがある
- 本人が自分の不調を“病気”として認識できていないことも多く、早期対応が難しい
だからこそ、早期の医療介入・職場環境の理解・継続的なフォローアップ体制が不可欠なのです。
■ 病気による責任回避ではなく、「病気でも支え合える社会」へ
今回、広末さんの事務所は「病気によるものとすることで、責任を回避する意図は一切ない」とコメントしています。この姿勢には、大変共感します。
精神疾患や身体疾患があるからといって、全ての行為が免責されるわけではありません。ただし、病気が影響していた可能性がある場合には、その人の背景や治療状況を考慮した上で、社会全体でどう向き合っていくかという姿勢が求められます。
■ 「見えない不調」を抱える人の増加──職場や家庭での気づきが第一歩
精神疾患や甲状腺疾患は、外からは見えにくいものです。
- 「最近ちょっと怒りっぽいな」
- 「夜眠れていないみたい」
- 「仕事のミスが急に増えた」
こうしたサインを、単なる“甘え”や“性格”として片づけてしまうのではなく、「体調や心の不調が背景にあるのでは」と立ち止まって考える視点が必要です。
社労士として、また薬剤師としても、企業や家庭が適切に対応できるよう支援体制を整えることの重要性を感じています。
おわりに──心の病とどう向き合うか
広末さんのように有名な方のケースが報じられると、「あの人でもそうなるのか」という驚きと同時に、自分の周りでも起こりうることだと気づかされることがあります。
病気に対して正しく向き合い、誤解や偏見を少しずつ減らしていくことが、回復のための環境づくりにもつながります。
「精神疾患=危険人物」ではなく、「適切な支援で社会に戻れる病気である」ことを、社会全体が理解することが今後ますます大切になっていくでしょう。
HOLOS社労士&行政書士Labo
薬剤師・社会保険労務士・行政書士
石田 宗貴
投稿者プロフィール

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