地方の医師不足が深刻化 ~地域医療の危機とその背景~

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241022/k10014615641000.html

日本全国の医師数は増加しているにもかかわらず、地方の病院では医師不足が深刻な問題となっています。「医師不足のため休診」と掲示されている診療科を見かけることも少なくなく、特に地域医療を支える病院でその影響が大きくなっています。どうしてこのような事態に陥っているのでしょうか?ここでは、医師の偏在がもたらす問題と解決策について解説します。

地域医療の現場 ~秩父市立病院の状況~

埼玉県秩父市の秩父市立病院では、医師不足により診療を制限せざるを得ない状況が続いています。外科や内科、脳外科など、常勤の医師が確保できず、一部の診療科では非常勤の医師による対応を余儀なくされています。特に救急医療では、かつて7つの病院で夜間・休日の救急を担当していたところ、現在は3つの病院に減少。秩父市立病院が年間200日以上の救急を担当しているのが現状です。

医師の偏在とは? 二重の問題が浮き彫りに

医師不足の背景には、「地域の偏在」と「診療科の偏在」という二重の問題があります。

  1. 地域の偏在
    地方よりも都市部での勤務を希望する医師が多く、地方の病院では医師の確保が難しくなっています。地方では年配の医師の割合が高く、医師が引退するとさらに人材不足が深刻化するという悪循環に陥っています。特に埼玉県でも、さいたま市の医療圏は医師数が多い一方、秩父の医療圏では少ない状況が続いています。
  2. 診療科の偏在
    外科や救急科、小児科など、24時間体制が求められる診療科では、若い医師が敬遠しがちです。勤務時間が長く、専門的な技術を学びながらもプライベートを犠牲にしなければならないため、こうした診療科での人材不足が進んでいます。

国の対策と課題

国もこの問題を解決するために、さまざまな対策を講じてきました。その一つが、「地域枠」の拡大です。地域枠とは、大学卒業後9年間、特定の地域での勤務を義務付ける制度で、地域医療の人材確保を目指しています。しかし、若い医師の中には、地方で高度な医療を学ぶ機会が少ないと感じ、義務期間が終わると都市部へ戻るケースも見られます。

今後の方向性 ~強化すべき対策とは?~

現在、厚生労働省ではさらなる対策を検討中です。具体的には、以下のような案が議論されています。

  • 開業医の新規開業の抑制
    開業医が多い地域で新たに開業することを抑制し、医師の分散を図る。
  • 医師の地域勤務を管理者要件に
    病院の管理者としての要件に、医師が少ない地域での勤務経験を含める。
  • 診療報酬に地域差を設ける
    地方で働く医師にとってのインセンティブを高めるため、診療報酬に地域差を設けることも検討されています。これにより、都市部に集中しがちな医師を地方に誘導する効果が期待されています。

薬剤師や社労士としての視点

医師不足が深刻化する中で、薬剤師や社労士の役割も非常に重要です。薬剤師としては、地域医療チームの一員として医師をサポートし、薬剤管理や患者の健康相談に積極的に関わることが求められます。さらに、地方での医師不足を補うために、他職種との連携が不可欠です。

また、社労士としては、医療機関の人材確保や労働環境の改善に関与することで、働きやすい職場づくりをサポートする役割が期待されています。医師の負担を減らし、地域医療を持続可能なものにするために、さまざまな角度からの支援が求められます。

まとめ ~医師不足の問題解決に向けて~

地方の医師不足という問題は、今後も日本の医療の大きな課題であり続けます。地域で医療を支える現場の医師たちは、限られたリソースの中で日々奮闘しています。国や自治体、そして医療に関わるすべての職種が連携して、地域医療を支えるための体制を強化していくことが急務です。

地方で働く医師のインセンティブを高める取り組みや、地域の医療ニーズに応えるためのシステム改善が進められることを期待しています。


HOLOS社労士&行政書士Labo
薬剤師・社会保険労務士・行政書士
石田宗貴

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