【東北労災病院の富谷移転断念】県の病院再編計画がまた見直しへ──薬剤師×社労士の視点で読み解く
宮城県が進めていた病院再編構想が、また大きな転機を迎えました。
今回、仙台市の東北労災病院が県の進めていた富谷市への移転案を正式に断念し、仙台市での現地存続を決定。
県の構想全体は再び練り直しが必要になりました。
■背景:「移転は困難」──収支悪化と物価高の影響
2025年5月9日、病院を運営する労働者健康安全機構の理事長が県庁を訪問。
「新型コロナ以降の患者減、物価や人件費の高騰により、令和6年度は大幅な赤字見通し」と説明し、
富谷市での新病院建設に必要な資金を確保することが困難と判断。県・市との協議を打ち切りました。
■富谷市:「救急が届かないまち」という現実は続く
一方、富谷市側は「地域に総合病院がない」ことを大きな課題としてきました。
特に、急性期医療を担う病院がなく、救急搬送の遅延が命に関わることもあるとされてきました。
今回の移転断念は、その解決策の一つが消えたことを意味します。
市は今後、公募による病院誘致を改めて進める意向を示しました。
■薬剤師・社労士としての私見:「病院が動けば人が揺れる」
私は薬剤師・社労士として、日々医療・介護現場と関わっていますが、
このニュースを見て強く感じたのは、病院再編は制度や構想だけでは進まないということです。
東北労災病院は、高度な救急医療、がん診療、災害医療などを支える中核病院です。
そのような施設であっても、収支や建設コストの壁に直面すれば、
構想そのものが現実の前に止まる──その事実が重く響きます。
■再編が生む「制度に表れないリスク」とは
医療機関の移転・統廃合といったニュースは、
現場では様々な**目に見えにくい“揺らぎ”**を引き起こします。
- 「通勤が変わるのでは」「異動になるのでは」
- 「今の職場がなくなるのでは」
- 「患者はどうなるのか」
これは制度や理念だけでは見落とされがちな、
現場職員の迷いや戸惑いがもたらす揺らぎです。
こうした影響は、診療や業務だけでなく、スタッフの離職・連携の停滞・患者の不安感として表れ、
地域医療全体の質にも関わります。
■これからの病院再編に必要なのは、「人を起点に考えること」
再編が構想だけで終わらないようにするには、
人と制度の間をつなぐ視点が必要だと私は感じます。
- 人材流出を防ぐ働き方設計
- 勤務体制・待遇の再構築
- ベースアップ評価料など実務的制度の戦略的活用
- 患者・住民にとっての「通える・頼れる医療」の視点
こうした“人を起点にした設計”が、地域医療の再編には欠かせません。
■HOLOS社労士&行政書士Laboとしてできること
HOLOSでは、仙台・宮城県を中心に、医療・薬局・介護事業者の皆さまを対象に、
規模の大小に関わらずこうした再編・再設計の局面で次のような支援を行っています。
- 再編時の人事・労務体制の見直し
- ベースアップ評価料・処遇改善加算を含む制度活用のコンサル
- 医療連携・地域体制強化に伴う内部調整支援
構想がうまくいくかどうかは、制度と現場の“つなぎ方”にかかっている。
そんな現場目線を大切に、これからも地域医療の一助になれればと考えています。
▶ ご相談・お問い合わせはhttps://holos-labo.com/contact/ よりどうぞ。
HOLOS社労士&行政書士Labo
薬剤師・社会保険労務士・行政書士
石田 宗貴
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