HIFU施術でやけど、和解成立──“医師免許なし”の美容リスクと現場の責任

こんにちは。医療・介護・薬局に関わる現場の皆さまと向き合いながら、制度と労務管理の整備をお手伝いしている立場から、今回は美容施術をめぐる民事裁判の報道をもとに、労務・安全管理の視点で考えてみたいと思います。

2025年6月、東京都内の20代女性がエステ店で「HIFU(ハイフ)」施術を受けやけどを負ったとして提訴した裁判で、店舗を運営する会社が施術ミスを認め、謝罪と解決金の支払いを条件に東京地裁で和解が成立しました。

施術を行ったのは医師免許を持たないスタッフで、裁判所は「HIFUの使用は医師でなければできない医療行為に該当し得る」との判断を示しています。

https://www3.nhk.or.jp/news/word/0000414.html


“医療っぽいけれど医療ではない”領域の曖昧さ

薬局やクリニック、介護施設の現場でも、美容やリラクゼーション系のサービスとの線引きが曖昧になることがあります。

たとえば、宮城県内の薬局で美容相談を取り入れている事例では、肌トラブルに対して医薬品や施術を提案する際に、施術やアドバイスが「医療行為にあたるのではないか」という線引きに悩むケースもあります。

今回のHIFU施術は、表面的には美容目的のサービスでも、熱を加えることで皮膚組織に物理的な影響を及ぼす行為であり、リスクが非常に高いものです。
自由診療やエステ領域では、「医療のような見た目」であっても、実質的な法的責任が曖昧なまま運用されることも少なくなく、問題の根深さを感じます。


労務と制度の視点でリスクを減らすには

現場における一番のリスクは、「誰が、どこまで、何をしていいか」が明確でないまま業務が進んでしまうことです。
今回のように医療行為に該当する可能性のある施術を無資格者が行っていた背景には、教育不足や業務範囲の曖昧さ、顧客対応を優先しすぎる企業風土があったかもしれません。

医療機関や介護施設など、保険適用事業所においては、こうしたリスクを未然に防ぐために、「職務定義」や「業務マニュアル」「衛生管理体制」を整えることが非常に重要です。

たとえば**処遇改善加算(介護分野)**では、申請時に「職場環境等要件」として教育研修やキャリアパスの整備が明確に求められます。こうした取り組みは制度上の要件そのものであり、体制整備が加算の取得に直結します。

一方、ベースアップ評価料(医療機関向け)は、教育体制や職務定義そのものを申請項目とするものではありませんが、職員の働きやすさや職場環境の改善が制度の目的とされており、こうした整備は制度趣旨に合致する重要な基盤となります。


HOLOSが支援する「制度と現場の橋渡し」

HOLOS(ホロス)社労士&行政書士Laboでは、医療・介護・薬局分野の皆さまの現場が、法令・制度に適合した「安全で安心な体制」をつくるお手伝いをしています。

美容医療や自由診療との関わりがある現場でも、「これはどこまでOKなのか?」「どんなルールが必要か?」という疑問は決して珍しくありません。
だからこそ、“なんとなく”進めるのではなく、“制度に照らして明確に”しておくことが、スタッフも利用者も守る大きな土台になります。


安心して働き、安心して受けられるサービスのために。
今回の和解は、美容や自由診療に携わる現場にとっても、大きな教訓となるはずです。

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HOLOS社労士&行政書士Labo
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